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「蒼文~犀崎堂~」かもしれない。
登場人物
2年C組 杉本圭司
2年C組 水原沙月
大掃除でイコウ!
浜崎第二中学校の大掃除といえば、毎年三月の第一水曜日に相場が決まっている。
卒業式と入学式を目前に控えたこの時期、二年生が総がかりで校舎中をぴかぴかに磨き上げるのだ。
卒業生を気持ちよく送り出すため、新入生を新たな気持ちで迎え入れるため、この大掃除はもう何十年にも渡ってつづけられてきた浜崎二中の伝統行事なのである。
八時半の朝礼にはじまり午後三時の終礼まで。ある者は廊下を、ある者は体育館を、そしてまたある者は音楽室を――。
一学年三クラス、総勢九十二名の二年生たちは、あらかじめ決められたグループにわかれ、要領よく丁寧に分担作業を片づけていく。
そしてここ第二校舎一階の図書室においても、二人の真面目な生徒が一生懸命大掃除に励んでいた。
はずであったのだが……。
「なぁなぁ水原。これ見ろよ。これ」
「ん? なに? ニヤニヤして気色悪い」
学校中が大掃除の喧騒に包み込まれている中、静かな図書室の片隅で掃除道具を本棚にたてかけ雑談状態に入っているのは、二年C組第五班の杉本圭司と水原沙月だった。
廊下から見えないよう書棚の陰に隠れた圭司が、明るい茶色の瞳をいたずらっぽく輝かせている。それに困った顔をして歩み寄る沙月のほうは、深い闇色の瞳が印象的な美少女だ。彼女の少しあどけない雰囲気と、綺麗に切り揃えられた長い黒髪が制服のボレロによく似合っている。
校内の各教室や講堂では他のクラスメイトたちが掃除に励んでいるだろうに、二人がこうして与えられた仕事を中断しているのは、普段から調子のいい圭司がしつこくサボタージュを提案し、沙月がしかたなくそれに追従したからだ。
もともと圭司の清掃態度は不真面目であったし、いくら明るく真面目で優等生な沙月にしても、たった一人で掃除しつづけるほどのお人好しでもなかったのである。
「ほら、これこれ」
いかにも楽しそうな表情で圭司が沙月に見せているのは分厚い国語辞典の中の一ページだった。そこには「イ」を頭にした単語がすらりと並んでいて……、
「んっと……印肉、隠忍、因縁……って、なによこれ! バカ! スケベ!」
沙月はその儚げな外見に似合わず、拳でグーを作って圭司の肩をこずいた。
あろうことか彼が示した次の単語は「陰嚢(いんのう)」で、その下には「陰茎(いんけい)の付け根の下にあるふくろ」なんてことが丁寧に記されていたのである。
彼女は固めた拳で圭司の脇腹をぐりぐりとえぐって攻撃をつづけたが、懲りない圭司はそれがかえって楽しいのか、ニヤニヤ笑いを浮かべたまま不埒な解説をやめようとしない。
「ほらほら、他にもいろいろあるぞ。淫売とか陰部とか淫奔とか。この淫奔(いんぽん)ってのは初耳だな。意味はほら、女性が性的享楽におぼれやすいこと、だってさ」
なにぶんエッチなことに興味津々な十四歳である圭司は、もう数年来のつきあいであり、またクラスの女子の中でも一番かわいいと常日頃から思っている沙月に対し、この手のネタをふるのが大好きなのだ。
色白の彼女が顔を真っ赤にするのはとてもかわいらしかったし、それに沙月はたしかに真面目な優等生ではあったけれど、かといってそんなに堅物というわけでもなく、なんだかんだ言いながらも、いつも圭司の相手をしてくれるのがまた嬉しいのだ。
「他にもいろいろと、ほら、たとえば媚薬とか。……媚薬とは性欲をおこさせる薬である、だってさ。なんか単純だよな」
「もーう。そんなことくらいで喜んで、男ってのは単純で幸せねぇ」
「なんだよ。こないだはおまえも”セックス”って聞いただけで赤くなって喜んでたじゃないかよ」
「あ、あれはねぇ……その……喜んでたんじゃなくて、ちょっと珍しかっただけじゃない。もう、変なこといわせないでよぉ」
沙月は圭司の手から辞書を取り上げ、書架にもどすべく席を立ちあがった。
スポーツ万能でルックスも悪くない彼と雑談するのは彼女にとっても楽しいことだったけれど、いつ先生が見回りに来るかわからないし、掃除すべき場所もまだまだ残っているし、そんなにのんびり休憩ばかりしているわけにもいかない。
「ほら、さっさとモップ終わらせて、壁にも雑巾がけしなきゃ」
せかすように言い残し、彼女は書架へと踏み込んだ。
紙とインクとカビの臭い。図書室独特の古いけれど清新な空気を胸一杯に吸い込みながら、国語辞典を片手に戻すべきスペースを探す。
が、書棚は様々な本で埋め尽くされていて、なかなか目的の場所は見つからない。
(弱ったな……)
唇を尖らせて書棚の端から端まで視線を往復させていると、圭司がわざとらしく口笛を吹きながら現れた。
どうやら時間いっぱいまで掃除をさぼるつもりらしい。いつものことだ。チャイムの鳴る五分前になったら、ほとんど短距離走をしているような勢いで掃除をかたずけるつもりなのだ。
沙月は軽く眉をひそめ、圭司に訊ねた。
「ねぇ、この辞書どこにあったの?」
「さぁて、ねぇ~?」
歌うようにそれだけ答えると、彼はまた別な本を探し出し、その場でページをめくりはじめる。
「お! これはいいぞ。家庭の医学、生殖器官の構造だってさ」
分厚い本の中から圭司は白黒で印刷された女性器の断面図を発見し、嬉しそうな表情でこれみよがしに沙月の胸元へと差し出した。
「おおー。膣って奥のほうは広がってるんだな。でも、この図からするとさ、膣ってギザギザしてるみたいで、なんか痛そうだよな」
圭司が大げさな身振りでおどけてみせるが、沙月は何も聞かなかったふりをして本棚の隙間を探しつづける。
彼女にしても年齢相応にエッチな好奇心はあるし、そういう話が嫌いなわけでもないが、ここまで露骨な話題になるとさすがに少し恥ずかしすぎるのだ。
沙月は大急ぎで視線を左右に走らせ、辞書をつっこむ適当な場所を探した。
楽しくエッチな会話もいいものだが、なにぶんこれ以上は自分がエッチな女だと思われる危険性がある。
クラスのみんなより特別に清純派だとも思わない沙月ではあったが、かといって圭司にエッチな奴だと思われることは避けたいところだった。
が、しかし、彼はそんな微妙な女心に気づきもしないのか、沙月の困惑などおかまいなしに、ページを次々にめくって卑わいな話題をやめようとしない。
「膣のこのギザギザってさぁ、本当は柔らかいんだろうな。考えてみるにさ、この凹凸が名器の素質ってやつなのかな?」
「知らないって」
沙月は一言で切り捨て、でもやっぱり圭司の言葉が少し気になってしまう。
なにしろいずれ迎えるだろう初エッチに通じるかもしれない話題なのだ。彼女にしてもオナニーの快感くらいなら既に知っているし、中学生にもなってそういうことに興味のないほうが、かえって不自然なことだとも思う。
「ミミズ千匹とかカズノコ天井っていってさ、本当に知らない?」
圭司が上半身をかがめ、沙月の顔を下からぐっと見上げるように覗きこむ。
明るい茶色の瞳と澄んだ闇色の瞳が正面からぶつかって、沙月は思わず高い天井を見上げた。
そしてひとつため息をつき、気を取り直して圭司の顔を見る。会話の内容が内容だけにちょっと胸の奥がざわついたが思い切って口を開く。
さすがにここまで迫られると何か答えないわけにもいかなかったし、この際であるから初めて耳にした単語の説明を求めることにしたのだ。
「ミミズとかカズノコって、なんで、それが女の人の、その、性器に関係あるのよ?」
「なんだ? そんなことも知らないのか? しょうがないな、教えてやるよ」
沙月に反応してもらったことがよほど嬉しかったのだろう。圭司は偉そうに腕を組みながらも、はずむような声で説明をはじめた。
「ミミズ千匹ってのは膣が千匹のミミズみたいに男のあれに絡んできて、エッチのときに凄い快感なんだって。カズノコ天井ってのは子宮口のあたりがブツブツになってて、これも天に昇るほど気持ちいいって話なんだよ」
「へぇ~。そうなの」
実際興味はしっかりあるのだが、沙月はさも気のなさそうな素振りで答えた。
「なんだよぉ。それだけかよぉー」
「なにか不満でも?」
沙月はようやく発見した本棚の空きに辞書を戻し、けれどちょっと考えて、そのまた隣の本に手を伸ばした。分厚い本を手元に引き寄せながら意識は圭司のほうへと集中させる。
なにも名器がどうのという話に興味を持ったわけではなくて、それを嬉々として解説し、自分が興味のないふりをすると簡単にスネてしまう圭司の反応が面白いと思ったからだ。
あんまり相手にしないのも可哀想だし、何か質問してあげるだけでそんなに嬉しいのなら、もうちょっと楽しませてあげてもいいかな? という気にもなる。
圭司とは小学校以来のつき合いだし、彼が自分に好意を持っていることにも薄々感づいているし、実のところ沙月にしても圭司のことが嫌いなわけではない。……というか、他の女の子には関心を示さず、自分だけに限定してちょっかいを出してくる彼のことは可愛いと思うし、けっこう好きかもしれないので、彼の喜ぶ顔は自分にとっても嬉しいことかもしれないのだ。
「ねぇ……、じゃあ、男の子にも名器ってあるの?」
頬が熱く火照るのを感じながら、沙月は手に取った本をパラパラとめくった。
この状況で本の内容なんてよくわからないが、正面むいて男の子にそういうことを訊ねるのは、さすがにできそうにない。
「えっと、そりゃあ、あれだろ。やっぱ太くて固いやつじゃないのか? あと形も関係あるか。でも、長さってのはどうなんだろうな?」
圭司の問いかけに「乗りかかった船よ」と、沙月はちょっと緊張のおももちで友達から聞いた話を伝えることにした。
「うーん……。長すぎるのは奥に当たって痛い、っていうもんね」
「だろ? やっぱそうか。そんな25センチも30センチもあったら化け物だもんな」
どこか安心したような声で言う圭司に、沙月は内心で苦笑した。
男の子というものはどうやら、やはりあそこの大きさがとっても気になるらしい。
それに今の反応からすると彼のはたぶん小さめなのだ。
掃除をさぼった罰と見た目清純派の自分をこんなに恥ずかしい気分にさせてくれた罰に、ちょっとここは彼をからかってやろう、なんていたずら心が胸の奥で跳びはねた。
「んっと……、じゃあ、杉本くんのは何センチくらい?」
ためらいがちに問いかける沙月の狙い通り、こんどは圭司が赤くなる。
「バ、バカ。おまえ、急に何言うんだよ!?」
慌てふためく彼の反応に、沙月のいたずら心はさらに刺激される。
沙月はちょっと上目づかいになって挑発するような態度で言葉をつづけた。
「ふーん、答えられないんだ……?」
「な、なんか文句あるかよ?」
「もしかして、杉本くんって……」
「だから、何だって?」
「小さい……の?」
沙月は唇から小さく舌を突き出し、さもおかしそうに笑ってやった。
圭司の日に焼けた顔が見る間に紅潮する。唇を何度か悔しそうに噛んで、彼はかすれた声を喉の奥からしぼり出す。
「バ、バカにするな。勃起時で23センチだから、小さくはないぞ」
こんどは沙月が息を飲み、頬を真っ赤に染めることになった。まさか圭司が本気でそんなことまで答えるとは予想していなかったのだ。
突然の彼の言葉に沙月の頭の中では、ただの数字がいやらしくもリアルな映像に変換されそうになる。
(23センチって、手のひらをいっぱいに広げて15センチくらいだから……)
沙月は頭をぶんぶん横に振って、そのエッチすぎる想像を頭の中からかき消そうとした。
「あ、あからさまに言わないでよぉ」
手に持った本を戻すのも忘れ、あたふたとその場を離れようとした。
が、
「おい待てよ! 自分だけ訊いておきながら逃げるのは卑怯だろ? 水原も自分の大きさ、言ってみろよ」
あまりにもストレートな圭司の言動に、踏み出した足が思わず滑りそうになる。
(男の子みたいに見えるわけでもないのに、どうやって自分の大きさを測れっていうのよ~?)
沙月は頬をひきつらせ、勢いよく後ろを振り返った。
「そんなのわかるわけないでしょっ!? エッチしたことないのに!」
しかし、その瞬間、圭司はニヤリと笑うと、信じられない言葉を返してきたのだ。
「じゃあ、エッチ、してみるか?」
彼がそう言い終わった刹那。
沙月の眉間にぴきぴきと青筋が走り、圭司の顔めがけ鋭い平手打ちが飛ぶ。
「って、冗談冗談」
けれど、その攻撃は十分に予想されていたのだろう。圭司は右手でやすやすと沙月の手首を受け止め、とっておきの秘密を話すように小声で囁いた。
「でもさ、女の子のあそこの大きさ、エッチしなくてもわかるんだな、これが」
そして彼は捕まえた手首を左手で軽く持ち直し、右手で沙月の細く滑らかな指をそっと捕まえる。
「ほら、おまえの指をこう……、人差し指と中指を伸ばしたまま、中指の腹に人差し指の爪をくっつけて。そして、こんな感じに……」
圭司は沙月の人差し指と中指のあいだに薄い空間をつくり、それを二人の目の前にかがげた。
「ほら、この隙間がおまえの大きさだよ。指が一本入るくらいで……、やっぱ水原は処女なのか」
「あ……、当たり前、でしょ!」
沙月は慌てて手を引き下ろす。
なにしろ運動会のフォークダンス以外では、男の子と手を握ることなんて滅多にあるものではないのだ。それが普通に握られるどころか、勝手に指を操られ、事もあろうに自分のあそこに比喩されてしまう始末。
恥ずかしさと、妙な屈辱感がないまぜになって、何かとてもいけないことをされてしまったような、けれど胸がキュンとうずくような、重苦しくも甘酸っぱい感覚が胸を包み込んでいる。
「も~う、ホントにエッチなんだから……」
あまりの恥ずかしさに弱々しく呟いた沙月だったが、かといって、そのまま黙って引き下がるわけにはいかなかった。
なにしろ、さっきまで優位に立っていたはずの自分が、このままでは圭司のいいオモチャにされてしまったような気がするのだ。
顔が赤くなったことも悔しいし、弱々しい声を出してしまったことも悔しいし、何よりも圭司が勝ち誇ったように笑っていることに対し、なにか無性に腹が立つ。
ともかくも何か仕返しすべきだと思い、沙月は手に持った本を書棚に戻すと、すぐさま彼の手をつかみ返した。
「あのね。わたしも同じような事、知ってるんだけどな」
恥じらいの気持ちを打ち消すように、わざと鼻にかかった甘い声で大人の女を演じてみる。そして圭司の親指を、スラリと白い人差し指と中指でつまみ、そっと立ち上がらせる。
「ほら、親指って男の人を表したりするでしょ? あれってやっぱり意味があるのね。ほら、親指の関節の下ってくびれてるから……」
言いながら圭司の親指を、つまんだ指で優しく撫でる。
「このくびれの比率がね、えっとぉ……、わかる、よね?」
沙月はさっき圭司にされたように、人差し指と中指を組み合わせ細い裂け目をつくった。
それを圭司の親指の先端に軽くあてがい、何事かと驚いている彼の顔を上目づかいに見つめる。
「な、なんだよ……?」
喉に絡むような声で答える圭司の顔が真っ赤に強ばっていた。
彼にしても沙月の言わんとしていることが十分に推測できるのだ。圭司は暫くためらっていたが、やがてごくりと喉を鳴らし、沙月の瞳をじっと見つめ返した。
「どういう、つもり……だよ?」
圭司の言葉を遮るように沙月は小さく笑い、指でつくった裂け目を彼の親指の先端に押しつけた。
「んっ、と」
沙月の甘い声がして、圭司の親指が沙月の割れ目に飲み込まれる。
圭司の親指は日に焼けて黒く、沙月の白い指は圧迫されて桜色に染まっている。
それはなにかとてもいやらしい光景で、自分からすすんでした行為だというのに、沙月の胸は100メートルダッシュしたあとのように高鳴っている。
「ね? こうして戻そうとしても、なかなか抜けないの……」
沙月は人差し指を思い切りそらせ、圭司から逃れようとするが、彼の親指の節がひっかかって思うようにいかない。
「杉本くんって、けっこう太い、ね……」
沙月は抜くことをあきらめると、裂け目をまたそっと親指の付け根へ滑らし、一息ついて関節まで引き戻し、また付け根に戻すことを繰り返す。
自分自身のすることであるから、沙月にはその行為が何を意味するのか十分にわかっていた。
例えばこの親指をそのまま何倍か拡大すれば、親指の関節と骨の太さの関係が男性器の太い部分と細い部分の比率にあてはまるし、もう一段大きな意味を与えて解釈すれば、人差し指と中指は沙月自身を表し、太い親指は圭司自身を表しているのだ。
つまりこの行為は疑似セックス以外の何者でもなくて、圭司の親指が沙月の指の裂け目に侵入するのは、圭司に沙月が突かれているこということになる。
沙月は自分の指で圭司の指を何度も優しくしごきながら、股間の奥が熱くうずきはじめているのを確かに感じていた。
「ねぇ……この意味……わかる、よね……?」
沙月が小さな声で囁くと、圭司は薄い下唇を噛んで、ぎこちなくうなづいた。
「なるほどね……。親指の太いとこと細いとこの比率がそうなんだ……。じゃあ、水原とのセックスはこんな感じか……」
わざと明確な単語を示したのは、おそらく彼の強がりなのだろう。
しかし、その言葉によって、沙月はあらためてこの行為の意味を認識し、不思議な心の高ぶりに全身を微かに震わせることになった。
これは確かに疑似セックスであったし、しかもそれを仕掛けたのは女の子である沙月自身のほうなのだ。
(なんか、わたしって、すごいエッチだ……)
今はもう圭司のほうからも、沙月の指の動きにあわせ親指を軽く突き返してくる。
それを何の抵抗もせずに受け入れようとする自分を意識すると、沙月の全身が何とも言い表せないほどの高揚感に包み込まれる。
それはもちろん実際のセックスとは違う種類の感覚だったのだろうけれど、異性に体の裂け目を何度も貫かれるということ自体にセックスでの快感を連想し、沙月の頭はのぼせ、心臓はドキドキ鳴りつづけ、ダメだと思うのに下半身は未知の感覚に切なく疼いてしまう。
「ねぇ……杉本くん……いつまで、こんな、こと……?」
「そう、だな……やばい、よな、これは……」
二人は熱い吐息を漏らし、じっと見つめ合いながら指をすりあわせつづけた。
圭司は己を締め上げる沙月の指の柔らかさがとても心地よかったし、沙月にしてもこのどこか後ろめたくも甘い状況に全身を絡みとられたようで、どうにも行為を中断するきっかけがつかめなかったのだ。
「なんか、オレ、興奮してきちゃったかも……」
せっぱつまった圭司の言葉に、沙月はまた自身の体の変化を意識することになる。
(わたしだって興奮してるのに、そんなこと言われたら……)
これ以上この行為に耽っていてはいけないという理性を、未知なる性行為への好奇心がおしのける。なまじオナニーの快感なんてものを知っているから、それ以上の快感への期待感が体の奥から自然とわきだしてくる。
腰の中心がじくじくと火照り、沙月は下着の中にトロリとした熱い液がこぼれ落ちるのを感じた。
「興奮って、指触っただけなのに、どうして、なの……?」
意識して親指をさするスピードをゆるめ、沙月は彼の瞳を挑発するように覗きこむ。
「なんか、よく、わかんないないんだけどさ……、その、あれが勃ってきたというか、その……」
「たしか……23センチ、だっけ……?」
冗談めかして答えたつもりの沙月ではあったけれど、その言葉はどうしようもないほどに生々しいセックスを二人に連想させてしまう。
沙月と圭司の視線が熱く絡まり、つづく言葉は濃密な空気に途切がちになる。
「バ、バカ言ってないで……オレたちも、いいかげん掃除しないと……」
「う、うん……」
そう言葉を交わしても、なにか後ろ髪引かれるような気分で、二人は見つめあったままずっと指を絡めつづけた。
そのまま十秒がたち、二十秒がたち……。やがて圭司の残った手は、彼の意思に反するように制服に隠された沙月の腰へとまわされ、沙月の方もその動きを察知しながら、なぜか振り払うことができない。
「あのさ、水原……」
圭司のどこか真剣な声に、沙月は何も言わず小さくうなづいた。
「オレ、もう……」
沙月の腰にまわされた圭司の手が、彼の言葉の途切れとタイミングを同じくして強ばる。
その震えが沙月のくびれた腰に伝わり、熱く湿りかけている股間がまた一段熱くとろけた。
圭司が大きく息を吸い込み、腕にぐっと力をこめた。
沙月の腰に衝撃が走り、それだけで彼女の両足は今にも萎えそうにまってしまう。
「あ、あの……わたし……その……ちょ、ちょっと……」
沙月はたまらず絡めた指をほどき、力の抜けた足を支えるように両手で圭司の胸にしがみついた。
喉がカラカラに乾いている。心臓は今にも爆発してしまいそうになっている。目もくらみそうなほど興奮していて、 ほとんど何も考えることができない。
今はもう腰にまわされた彼の手が、しっかりと沙月の体に食い込んでいた。
「み、水原……?」
彼の言葉に顔を上げると、また視線が真正面から絡み合って、沙月の頭の中が真っ白な光でいっぱいになった。
もうこれ以上、この息の詰まるような感覚に耐えることなんてできない。あともう一瞬でも、この切なすぎる甘い衝動を押し殺すことなんかできない。
そう思うと、ひとりでに沙月のあごは上をむいてしまい、淡いピンクの唇も薄く開いてしまっていた。
沙月の半分ぼやけた視界には、圭司の明るい瞳とひきしまった唇、それに図書室の暗い天井が滲むように映っている。
「わたし……杉本くんとなら……キスしても、いいよ……?」
乾ききった喉から声を絞り出した。すると彼は一瞬驚いた顔をして、けれどすぐに小さく頷いた。
頭の芯にじんじんと電流が走り、沙月はそっと瞳を閉じた。
(男の子とのキスって、どんな感じなんだろう? キスで気持ちよくなるって、そんなの本当にあるのかな?)
そう思った次の瞬間、沙月の唇は圭司の唇に1ミリの隙間もなく塞がれてしまった。
はじめてのキスに沙月の首筋がカッと熱くなる。
しかしその感覚をじっくり確かめる間もなく、熱くぬめった圭司の舌が強引に沙月の唇を割り開いた。
圭司の舌が沙月の口腔へと侵入し、すると二人の舌が絡み合うのは一瞬のことだった。
「ん、ぅっっ!」
口の中を舌の底まで深くむさぼられる感覚に、沙月の全身が総毛立った。もっと甘く、もっと優しいキスを想像していた彼女は、圭司のあまりの強引さに、まったく抵抗らしい抵抗を見せることすらできなかった。ただ口腔深く彼を受け入れ、自分の舌を求められるがままに差し出すしかない。
熱く濡れた圭司の舌にくるまれ、沙月の舌が強く吸い上げられる。強引で深いキスは、まるで自分のすべてが彼に求められているような、はじめての恍惚感を彼女の中心に呼び起こす。
ただ強く舌を吸われるだけで体中の力が消え失せてしまい、沙月は彼の背に両手をまわし、力の抜けた足でその場に立っているのがせいいっぱいだ。
「あ……うぁ……ぁ……ぁ……」
合わさった唇の隙間から沙月の小さな声が漏れる。
お互いの粘膜を深く絡み合わせる異性とのキスは、熱く、激しく、けれど途方もないほどに甘く切ない感覚を沙月の体内に目覚めさせていく。圭司のキスは若さにまかせたあまりにも激しいものだったけれど、だからこそ自分もまた十四歳の中学生でしかない沙月は、たやすく初めての快感に溺れてしまう。
長く深いキスがつづき、いつしか沙月は圭司が流し込む唾液を無意識のうちに飲み下すようになっていた。もっと深く、もっと強いキスを求め、唇をいっぱいにひらき、彼の伸ばす舌にすがりついていた。
飲み干し切れない唾液は彼女の首筋を濡らし、ブラウスの中へと流れ込み、なめらかな肌をしっとり湿らせていく
そして沙月の下半身もまた熱く濡れている。じくじくと疼く下腹部の正面には、スカートとズボンをあいだに挟み、圭司の強ばりがしっかり押しつけられている。
(杉本くんも、わたしとキスして興奮してるんだ……。わたしの舌で興奮してるんだ……)
そう思うだけで沙月の思考は今にも千切れそうになり、両膝に残っていた最後の力もあっけなく抜け落ちてしまう。
やがて、はじめてのキスに耐えきれなくなった沙月は、その場にずるずると崩れ落ちてしまい、ぴたりと重なりあっていた唇も離れ、二人のあいだに溢れた唾液が教室の床にポタポタと滴り落ちた。
「な、なんだよ水原……? 立ってられないのかよ?」
「う、うん……その、キス、なんてはじめてだったし……なんか、わたし……ちょっと変かも……」
息も切れ切れに答える沙月に対し、圭司は明るいその瞳に小ずるそうな光をキラリと輝かせた。
「はじめてって言っても、まさかおまえ……キスだけでそんなに感じるのか?」
「えっ……そ、そんなこと……」
「だって顔真っ赤だし、体もピクピク震えてたぞ」
「そ、それは、その……杉本くんが、あんまり強くするから……」
「じゃ、じゃあ、やっぱりもっと優しくしたほうがいいか?」
「えっと……その……」
沙月が答えに迷っているうちにも、圭司は嬉しそうな表情でのしかかってくる。
「とにかく色々やってみるか? 水原のキスって、凄くおいしかったし」
「も、もう……杉本くんのエッ……!」
言い終わる前に、沙月の唇はまた彼に奪われてしまった。
けれど今度はただ激しいだけのキスではない。圭司は尖らせた舌先を少しだけ沙月の中に差しみ、チロチロと歯茎のすみずみを探るように舐める。くすぐったいような、痺れるような快感がまた沙月の思考に霞をかける。さっきから一転して、あまりにも優しく甘いキスに、彼女は瞬く間に我を忘れ瞼を閉じる。
「んっ、うっ……そ、そんな……ぁっ……っん!」
とつぜん沙月の右の太股に、わけのわからない甘い衝撃が走った。ただでさえ力の入らない足が、今まで経験したことのない感覚に溶けてなくりそうだった。
「ん、ぁっ……な、なにっ……?」
驚いて目を開けて見ると、圭司がゆっくりと沙月の内股を撫でさすっていた。
彼の手が動くたび、沙月の太股にはゾクゾクとした快感がわきおり、そのせいで股間がまた熱くとろける。
圭司のぎこちない愛撫は沙月の白い肌を溶かし、神経繊維を溶かし、すべての感覚を快感にすりかえていく。
「うぁ……ぁ……そんな……」
圭司の手は沙月のスカートをまくりあげ、徐々に太股の付け根のほうへとずり上がってくる。
「そんな……ダ、ダメッ!」
たまらず沙月は彼の手を払いのけようとした。これ以上されたら気持ちよくて、気持ちよすぎて、体も頭もどうにかなってしまいだった。足はとろけてしまいそうだし、下着の中はもうぐちゅぐちゅだし、これ以上されたら、恥ずかしくて感じすぎて死んでしまいそうだった。
「そ、そこは……や、やだぁっ」
「大人しくしろって。ちょっと触ってみるだけだから」
圭司は左手一本でたやすく沙月の突き出した両手を捕らえ、優しくねじ上げてしまう。
スポーツ万能で力も強い彼を相手に、両足に力が入らなくて、手をジタバタ動かすだけの沙月の抵抗なんか何の意味もなさない。
あきらめて沙月が力を抜くと、圭司の動きが自然と滑らかになった。その動きはあまりに滑らかで、沙月が太股を閉じようとするのも一瞬間に合わなかった。
沙月の中心に鋭い衝撃。つづいて強く、あまりにも甘い快感。
たまらず沙月はお尻をぎゅっとすぼめた。
濡れた下着に圭司の指先が食い込み、ゾクゾクとした快感が沙月の背筋をかけのぼっていく。
たまらなく気持ちよくて、それがなんだか怖ろしくて、沙月は両手で頭をかかえこみ、体を丸くすくめた。
「うっ……んっ……っ……!」
沙月は歯を食いしばってその快感に耐えた。今にも溢れそうになる甘い声を喉の奥に縛り付けた。
それなのに圭司は、そんな沙月の努力をあざ笑うかのように、さんざん濡れたその部分で指先をゆっくりと動かしはじめる。薄いコットンの下着ごしに小陰唇をそっとなぞり、固く尖ったクリトリスを優しく押しつぶす。
「すごい……水原のパンツ、びしょびしょになってるぞ……。やっぱりおまえ、感じてたんだな……」
「バ、バカッ……そんな……動かしちゃ、その……ん、んんっ……」
「気持ちいいんだろ? それとも……まさかとは思うけど、もうイキそうなんじゃないよな?」
「し、知らないッ…」
そう答えたものの、沙月にはよくわかっていた。
あと少し。たとえば固くなったクリトリスを軽くひねられるだけで、彼の言うとおり、すぐに自分はいってしまいそうなのだ。
腰が熱くとろけるような、頭の中心が痺れるような感じ。これほどに甘く切ない快感は、自分一人の行為では絶対に味わうことなどできないものだ。
「なぁ、水原? おまえって、どうすればイクんだよ?」
圭司はいつになく真剣な表情でそんなこと沙月に訊ねる。彼の明るい茶色の瞳がキラキラと輝いている。
「やっぱ直接触った方がいいのか?」
「そ、そんなこと、言えるわけ……ぁっ……つっ……!」
べっとり濡れた沙月の下着を、圭司が指先で軽く引っ張る。
ひやりとした図書室の空気に沙月の火照った性器がさらされる。
そして、ぴちゃりと軽い水音。すぐに甘い快感。愛液にまみれたスリットに、圭司の指が直接触れている。
心の底まで溶け崩れるような衝撃に耐えようと全身に力をこめ、けれど下半身にはまったく力が入らない。喉も痺れて、歯を食いしばっても、鼻から甘い声が漏れてしまう。
「ん……くッ……んッ……ふぅッ……うぁ……」
微かに震える圭司の指が沙月の小陰唇をなぞり、とろとろとした愛液の出口をこねくり、やがて尖ったクリトリスを軽く押しつぶす。
無意識のうちに待ちわびていた快感だった。沙月の腰はわななき、思考が一瞬で停止した。スリットから熱い雫がドロリと漏れるのがはっきりと感じられた。
「んぅッ……ぅッ……ぁッ!」
「声はまずいって。廊下には誰かいるかもしれないし」
真剣な圭司の言葉に、沙月は右手で口元を覆った。それでも耐え切れなくなって、手のひらにグッと歯を立てた。
けれど、そんな沙月をもてあそぶかのように、圭司の指の動きは徐々に滑らかになっていく。それにつれて沙月の感じる快感も急加速する。クリトリスを指先で優しくはじかれるたびに絶望的な気持ちよさが体中を突き抜け、何も考えることができなくなる。腰の真ん中がカァッと熱くなる。我慢しても我慢してもエッチな声が溢れそうになる。
「ぁぁッ……んっ……もっ、もう……わ、わたしッ……!」
噛んだ手のひらから唾液が滴り落ちる。それでも必死に歯を立てる。力をぬいたら、その瞬間に声をあげてイッてしまいそうだ。
(でも、もう……、これ以上、我慢なんて……)
沙月は太股で圭司の手を強く挟みこんだ。そのせいで彼の指先にさらなる力が加わる。限界まで敏感になった沙月のクリトリスに圭司の指先がめりこんだ。
快感がはじける。沙月の全身を甘い衝撃が突き抜け、息ができなくなる。
「うッ! ぅぅッ……んッ、ん……んんぅッ!」
書棚も天井も圭司の顔も、沙月の視界に入ったすべてのものがぐにゃりとひき歪んだ。両足が強張り、ひとりでに背筋がそりえかった。沙月の体が微かに痙攣する。絶頂の只中に引きずり込まれる。
「う、ぁっ……ぁっ……くっ……う、うふぅ……」
それでも圭司の指はしぶとく動きつづけ、なかなか沙月を開放しようとはしない。
そのまま二十秒、三十秒が経過し……、
ようやく沙月の体からすべての力が抜け落ちた。
圭司がフッと一息ついて、股間に差し込んだ手を抜いた。
「すげー。手のひらまで愛液で濡れてるよ」
沙月は恨めしげに圭司の顔をにらんだ。そんなこと言われなくたってわかっている。溢れた愛液のせいで、お尻も太股もスカートだって、もうぐちょぐちょに決まっているのだ。
こんな状態で、これからまだ数時間も学校で過ごさなきゃならないと思うと絶望的に気分になる。
「なんだよその目は? 気持ちよかったくせに」
圭司が満足げに笑って言葉をつづけた。
「いやぁ。イッてる水原はかわいかったなー。顔は真っ赤だったし、涎まで垂らしてたもんなー。オレもう興奮しちゃって、おかしくなりそうだったよ」
沙月の頬が火照る。頭に血が上る。
圭司といったら、いったい誉めているのか、いじめているつもりなのか。たぶん、いや、絶対に後者に決まっている。
「バ、バカっ。恥ずかしいことは言わないのっ。す、杉本くんってば、覚えときなさいよっ」
とっさに出た沙月の言葉に、圭司が不思議そうに瞼をしばたたかせる。
沙月はゆっくりと起き上がりながら心の中を強引に整理し、できる限りの努力を持って、おそらく妖艶に見えるだろう笑顔を彼に送ってやった。
「わたしをこんな目にあわせて、ただじゃ済まないだから」
そうだ。このまま自分一人がやられっぱなしでいいわけがない。いかされたのも恥ずかしいし、もちろん触られただけでも恥ずかしいというのに、沙月はまだ圭司の何を見るでもなく、もちろん触りもしていないのだ。
こうなった以上は、沙月にしても彼のその部分について、真実の姿を確かめねばならない。
「たしか、23センチなんだよね?」
親指を立ててかわいらしく首をかしげると、圭司の顔があからさまに強張った。
「えっと、その……、なんだ? オレって、そんなこと言ったっけ?」
「往生際が悪いのって男らしくないぞ。定規はホラ、わたしちゃんと持ってるから」
沙月は制服の内ポケットからプラスチック定規を取り出し、顔の横でフラフラと振って見せた。
「そ、それって、たった12センチじゃんか。それじゃオレのは計れないな」
圭司は顔をひきつらせて強がるが、沙月はそれを見下し、ゆっくりと立ち上がった。
「あら、そう? それじゃ、いったん教室に戻って30センチ定規取ってくるから待っててもらおうかな?」
「いや、ほら。おまえ知ってるか? 日本人男性の平均サイズはたったの13センチで、だからべつに20センチないからといって……」
「だから?」
「いや、その……」
沙月はハンカチでひとまず太股をぬぐうと、うろたえる圭司をそっと押しのけ、まだ少し力の抜けたような感じのする足で図書室の出口にむかった。
壁に掛けられた時計を見ると時間はもう11時をすぎていた。図書室の掃除は正午までに終わらせなければならないから、余裕はあまりない。
「じゃあ、行ってくるね」
わざと明るく言い残し、沙月は図書室の扉をあけた。
廊下をそっと覗くと、誰の姿も見えなくて、洗剤の爽やかな匂いだけがそこはかとなく漂っていた。
ホッと一息ついて、ふらつく足を踏み出す。
下半身はまだじゅくじゅくと火照っているから、まずはトイレで濡れた下着なんかを始末しなければいけない。
と、そのとき、沙月の背中で圭司がポンと手のひらを打ち合わせた。
「それじゃ、オレはオレで水原の深さを測ることにするか」
沙月の腰が複数の意味で崩れ落ちそうになる。
廊下の向こうからは、掃除に励んでいるらしい生徒たちの声がにぎやかに聞こえてくる。
浜崎二中がぴかぴかに磨き上げられるこの日。二人の勝負はこうして幕を上げたのであった。
了
2001/4/7 saizer こと 犀崎大洋
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2013/01/12(土)07:08| | # [ 編集]
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2013/01/04(金)14:09| | # [ 編集]
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2011/08/19(金)01:24| | # [ 編集]
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Author:犀崎大洋
ひっそりと再始動したかも。
人畜無害なエロ小説書きです。