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    敬司3

     




     佐倉さんのリボンを締め直しながら、僕の下半身は痛いほどに張りつめていた。詰め襟の制服のおかげで彼女にはバレなかったみたいだけれど、ジンジンと痺れて今にも射精してしまいそうだった。
     正直に言えば、彼女に長いリボンをくくりつけたときから、とっくにその部分は固くなってしまっていたのだ。
     それはもちろん、リボンを結んだ彼女の姿があまりにも魅力的で、どこかエッチな感じがしたというせいもあるけれど……。
     それ以上に何か、リボンを佐倉さんの首に結ぶことで彼女が僕の所有物になったような気がして、だから彼女に何でも命令できるような気がして、僕は彼女にまた指を舐めてもらえればなんてことを想像してしまっていたのだ。
     それどころか、固くなったペニスを彼女に舐めてもらいたいなんてことまで考えてしまったのだ。
     バカなことを考えちゃいけない。
     興奮なんかしてる場合じゃない。
     そう思いながらも、勃起したペニスは決して小さくならなかった。
     佐倉さんの綺麗な髪をかきわけて僕はリボンの形を整えた。緊張に息を殺しながらリボンの端をきつく引っ張った。
     すると彼女は大きな目を細め、苦しそうな、それでいてとても切なそうな声を漏らす。
    「ぁ、ぁ、ぁっ」っという小鳥のさえずるような声。ハ長調のミがかすれたような音。
     その声はあまりに魅力的で、僕の指先は勝手に震えだし、無理な力が入り、しまったと思ったときには佐倉さんは目に涙を浮かべていた。両手をぎゅっと握りしめ、淡いピンクの唇を震わせ、苦しそうな吐息を漏らしていた。
    「う、うぁっ、ぁ、ぁ……」
     何て事をしてしまったんだと思い、あわてて指を外した。
    「さ、佐倉さん大丈夫!?」
    「あ……ぁ……う、うん、大丈夫……ちょ、ちょっと目眩がしただけ」
     彼女はそう言ってくれたけれど、リボンに隠れた首筋は赤く色づき、素直にのびた足は頼りなげにふらついていた。
     なのに、どうしてだろう?
     そんな彼女の姿を見た僕は、あろう事かさらに興奮してしまったのだ。苦しがる彼女の姿がまるで快感に震えているように見え、思わず抱きしめてしまいそうになったのだ。
     なんてひどい奴だ。なんてエッチな奴なんだ。
     自分をののしってみたけれど、どうにもならなかった。
    「あの、トイレ、行ってもいい?」彼女がそう言ったときも、体の底から生まれてくる欲望を抹殺することはできなかった。
     もっと彼女のかわいい声を聞きたい。もっと彼女の切なそうな表情を見たい。トイレの個室なら誰にも邪魔されることなくその願いを叶えることができるんじゃないか。
     体の奥から次々と生まれる欲望を制御できず、僕は悪夢にうなされるような気分で彼女に言った。
    「じゃあ、トイレの前までついて行くよ。佐倉さんちょっと辛そうだし、心配だから」
     親切な奴のふりをして、いかにも爽やかに見えるだろう笑顔を作った。
     それなのに。僕はそんなひどい奴なのに――。
     佐倉さんはいつものように明るい笑顔を返してくれた。ちょっと頬を赤く染め、「うん」と素直にうなずいてくれた。
     そして今僕は、彼女の首に白いリボンを巻いたまま廊下に出ようとしている。疑うことを知らない彼女を巧みに言いくるめ、一緒にトイレに向かおうとしている。
     佐倉さんの黒い髪。ほのかに色づいた首筋。それを隠す白いリボン。甘酸っぱい吐息。
     どうして彼女はこんなに綺麗で、純粋で、優しいのだろう?
     そんな彼女に比べて、どうして僕はこんなにエッチなんだろう?
     がたつく扉を開き、彼女の背を廊下へと押し出した。
     たぶんその時からだったのだと思う。ただ彼女に憧れていただけの僕の中で、何かが変わったのは――。
    「誰もいないみたい……」
     不安そうに眉をよせた佐倉さんが僕の目を見る。
    「廊下の掃除は午前中に終わったみたいだし、トイレもそのはずだから心配することないよ」
     平静を装って、ためらう彼女を勇気づける。
     実際のところ、いつ誰が廊下を通るかなんてわからない。
     けれど、だからこそ、僕は彼女の首にリボンをつないだままトイレへ向かいたいのだ。
     もちろん誰かにバレたら大変な騒ぎになるかもしれない。
     でも、そんな不安を消してしまうほどに、僕は佐倉さんを自分に縛り付けておきたかった。できることならずっと彼女を自分の所有物だと感じていたかった。誰かに彼女が僕のものであることを宣言したかった。
     気持ちは高ぶっている。下半身はあいかわらず勃起したままだ。
     僕はそんな自分の状態を気づかせないように、明るい声で彼女を促した。
    「さあ、行こう」
    「う、うん」
     僕がゆっくり歩き出すと、佐倉さんもあたふたと横に並んだ。
     彼女はとても緊張しているようだったけれど、それは単純に誰かに見られることを怖れているだけのようで、どうやらリボン自体を嫌がっているわけではないらしい。
     もしかすると彼女も僕と同じように、この甘酸っぱい一体感から抜け出せないのだろうか?
     それなら、とても嬉しいのに――。
    「やっぱりそのリボン、佐倉さんにすごくよく似合ってるよ。なんていうかさ、ミス首輪とかあったら、たぶん優勝するくらい」
     彼女の緊張をほどこうと冗談を言ってみた。
     ぎこちなく笑う佐倉さん。廊下の窓から射し込む光に、黒い髪がツヤツヤと光っている。
    「ミス首輪って、素直に喜んでいいの?」
    「いいんじゃないかな? その、思うんだけどさ、たぶんゴローちゃんの三倍はかわいいよ」
    「え-!? ゴローちゃんの三倍って、むちゃくちゃかわいいよ」
     佐倉さんの口もとがほころぶ。重かった足取りが軽くなる。
     廊下には誰もいない。
     そこここの教室の扉はいっぱいに開いて、中から掃除の物音がするけれど、わざわざ顔を出して僕たちを見ようとする暇な奴もいない。
    「あのね、でも、ゴローちゃんって本当に言うこと聞かない子でね、お手だってちゃんとできないの」
    「そうなんだ。でも、紀州犬って頭いいんじゃないの? 躾の仕方が悪いのかな?」
    「うーん……教え方が甘いのかなー?」
     僕たちの歩幅がぴたりとシンクロしている。
     白いリボンだけじゃない一体感。
     右、左、右、左。
     頭の中でリズムをつけて足を運ぶ。
    「うちでも昔、犬飼ってたんだけど、躾って厳しくしないとぜんぜんダメみたいだったよ。ダメなときはガツンと叱って、できたときは大げさに褒めてやるの」
    「えー。どんなふうに?」
     真っ黒な瞳で僕を見つめる佐倉さん。
     それだけで僕の胸は高鳴って、固くなった股間が下着にこすれる。
     じんじん、じんじん。
     お腹の中をこそぐられるような、とてもむず痒い感覚。
     僕は唾をゴクリと飲んで、口を開いた。
    「えっと、たとえば……佐倉さん、お手」
    「えっ?」
     僕の言葉に彼女が目をパチクリさせる。
     一瞬待って、僕は軽くリボンをひっぱる。
    「んっ!」
     呼吸を止められた彼女が苦しそうに顔をしかめた。
    「ほら、言葉で言っても犬はわからないから、こうやって体で覚えさせるんだよ。いい? 佐倉さん、お手」
    「う、うん……」
     佐倉さんが柔らかな手を差しだし、おずおずと僕の手に乗せた。
    「よしよし、いい子いい子」
     彼女の頭を優しく撫でる。ツヤツヤでサラサラで真っ黒な髪を撫でる。
    「あ……なんか嬉しい。これならゴローちゃんも憶えるかも」
     佐倉さんの頬が赤く染まる。瞳が明るく輝いて、唇のあいだから白い歯がのぞく。
    「じゃあ、佐倉さん、おかわり」
    「うん」
     頭を撫で撫で。
     嬉しそうに微笑む彼女。
    「なんか笹原くんに飼ってもらうのって楽しそう」
     はずむような言葉。
     僕の脳みそが弱い電気にビリビリと痺れた。
     笹原くんに飼ってもらう――。
     笹原くんに飼ってもらう――。
     胸が締め付けられる。言葉がひとりでに唇から滑り出す。
    「佐倉さんなら大切に飼ってあげるよ」
     驚く佐倉さん。顔が耳まで真っ赤になっている。
     でも彼女はすぐに笑って、
    「うん!」
     元気良く答えた。
     素直な彼女はこんな冗談にもちゃんとつきあってくれる。
     心臓がドキドキして、雲の上を歩いているようで、言いようもなく楽しい気分。
    「じゃあ佐倉さん、つづいてチンチン」
    「はい」
     佐倉さんは手を揃えてちょこんと差し出す。
     白い手。上目づかいの瞳。
     僕はきちんと頭を撫でて褒めてやる。
     笑顔の彼女。とてもかわいい。
     それじゃあ、こういうのはどうだろう?
    「佐倉さん、もう一度、指舐めて」
     サラリと言った僕の下半身は、今にもはじけてしまいそうだった。


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    小説 ホワイトリボン | コメント(0) | トラックバック(0)2005/01/10(月)07:50

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