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    観月4



     冗談め

    かした笹原くんの言葉に、私の頭の中は真っ白にとろけてしまう。
     体育用具室で感じた甘酸っぱい心地よさを、また期待してしまっている。
     まじめな佐倉観月に戻ろうと思ったのに、エッチな気分のせいで足の付け根から力が抜けそうになる。
     「佐倉さん、指、舐めて」
     彼が軽くリボンをひっぱる。白いリボンに私の首が締め付けられる。
     私は息を殺して首から生まれる切ない快感を我慢する。
     今、優しい彼は私の飼い主で、私は彼の忠実な飼い犬だった。
     リボンの強い束縛感が確かな一体感をもたらしてくれる。たわいもない彼の冗談が、今の私にはとても幸せに感じられてしまう。
     開け放たれた窓からは気持ちのいい風が廊下に舞いこんでくる。午後の柔らかな日差しが私たちの足元を照らし出している。
     嬉しくて、幸せで、気持ちよくて、とても甘酸っぱい気分。
     胸がドキドキして、頭がボーッとする。足の付け根のあたりが切なく疼いている。
     けれど、窓のあいた教室からは掃除のざわめきが絶え間なく聞こえてきている。誰かがふと廊下を見れば、私たちの姿が目に入る。
     そんな状況で男の子の指を舐めるなんて、それはやっぱりとてもいけないことだ。とてもエッチで、いやらしいことだ。
     でも、それがわかっているというのに、私は彼の言うことを訊いて指を舐めたいと思ってしまう。今朝と同じように、彼をもっと近くに感じたいと思ってしまう。
    「佐倉さん?」
     笹原くんがリボンをひっぱる。
     ほんの冗談とはいえ彼のペットである私は、それに従わなければならないし、とても従いたい。
     でも周囲の状況はそれを許さない。みんながこっちを見るかもしれない。見たとたん、私たちのしていることに気づいてしまうかもしれない。
     そうすれば首のリボンだけでも変なのに、みんなは私たちのことをどう思うだろう? やっぱり私と笹原くんはつきあっていて、エッチなことをする間柄だと思ったりするのかな?
     妙な期待と不安がないまぜになって頭の中心がじんじん痺れ、あそこの疼きが我慢できなくなってくる。
     不安と期待?
     そう、それは期待だ。
     いけないことなのに私は何かを期待しているみたい。
     見られてはいけない事なのに、私の心のどこかには、みんなに見てもらいたいという気持ちがあるみたい。
     ――笹原くんは私の彼で、私は彼に命令されて指を舐めてしまうくらいに彼のことが大好きなんです。誰か笹原くんを好きな女の子はいますか? もしいたら私たちの姿を見て、きっぱりあきらめてください。
     私の他にこんなことのできる女の子はいますか? いるわけないよね?
     彼は私を飼ってくれて、私は彼の言うことに素直に従うとてもエッチな女の子なんです。みんな私たちの仲のいいところを見てください――。
     その気持ちはどんどん強くなってきて、今にも私の理性を飲み込んでしまいそうになる。
    「大丈夫。みんな掃除に集中してるから、今朝みたいに、ね?」
     笹原くんが私の耳元で囁く。ぴんと伸ばした人差し指を私の唇の前に立てる。
     彼のかすれた声が私の頭の中に響き、とろけはじめた私の思考はそれだけでもうぐちゅぐちゅになってしまう。
     言葉が出ない。
     何も考えることができない。
     私は小さくうなずいて、彼の指をそっと唇に含んだ。
     そのまま軽く舌を巻きつけ、ちゅっと吸い上げた。
     それだけで私は目眩しそうなほどに感じてしまって、あそこからエッチな液が溢れたみたいだった。
     笹原くんがニッコリ笑う。
     私の頭を優しく撫でてくれる。
     胸の中が暖かな気持ちでいっぱいになり、また熱い液がトロリと流れ、下着が少し気持ち悪くなった。
     みんなは私たちを見たのかな?
     彼の指から唇を引いて教室を横目で見た。
     ホッと一安心。でもちょっと残念。
     みんなは私たちには気づきもせず、一生懸命に掃除をつづけていた。
    「佐倉さんって本当にかわいくて、本当に飼いたくなっちゃうよなー」
     笹原くんがため息をつくように言った。
     彼はそれからまた小さく笑ったけれど、その言葉はなにか冗談じゃないようで、どこか真剣なようで、私の胸はまた強くときめいてしまう。
    「私もね、本当に笹原くんのペットにしてもらいたいの」そう言いたいと思ったけれど、さすがにそれは言えなくて、私はあいまいな笑みを彼に返した。
     彼の「飼いたい」という言葉は冗談かもしれないけれど、「かわいい」と言ってくれたことは真剣な気持ちなんだと素直に信じることができて、とても嬉しかった。
     トイレまではあともう少し。
     美術室と美術準備室、それに視聴覚教室の前を通りすぎるだけ。
     このぶんだと、どうやら白いリボンには誰にも気づかれずに済みそう。
     そう思った直後、笹原くんが立ち止まり、私の首に巻いたリボンにひっぱられた。
     また弱い快感。声を押し殺す。
    「んっ……っと、どうしたの?」
    「何か変な声、聞こえない?」
     笹原くんが小さな声で言いながら伸ばした指差。
     その先には、掃除中なのに廊下側の窓をぴたりと締め切った美術室の扉があった。


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    小説 ホワイトリボン | コメント(0) | トラックバック(0)2005/01/10(月)07:49

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